認知症と診断されたら?家族が最初にすべきことを解説

認知症と診断されたら、まず落ち着いて「介護保険の申請」「お金と契約の整理」「家族での役割分担」の3つに着手してください。慌てて施設を探したり、本人から車の鍵や通帳を取り上げたりするより先に、この土台を固めることが、その後の数年を大きく左右します。診断直後は誰でも動揺しますが、認知症は診断から要介護になるまで数年かかることも多く、初期にできる準備は想像以上にあります。正直なところ、最初の1〜2か月の動き方で、家族の負担も費用も変わってくるのが現実です。
この記事のポイント
- 診断直後にすべきは「介護保険申請」「お金・契約の整理」「家族の役割分担」の3つ
- 介護保険の要介護認定は申請から結果まで通常30日ほどかかるため、早めの申請が肝心
- 施設探しや財産管理(成年後見など)は、本人の判断力があるうちに検討したほうが選択肢が広い
- 一人で抱え込まず、地域包括支援センターや相談窓口を早い段階で頼ることが遠回りに見えて近道
診断されたら最初にやるべきこと
認知症の診断を受けた直後、多くのご家族が「これからどうすればいいのか」で頭が真っ白になります。実はここで焦って施設を探し始める方が多いのですが、初期の段階でまずやるべきは、生活を支える「仕組み」を整えることです。日本では65歳以上の高齢者のおよそ6〜7人に1人が認知症とされるほど身近な病気で、決して特別な出来事ではありません。まずは「一人で全部背負わなくていい」と知ることが出発点です。
優先順位をつけるなら、(1)介護保険の申請、(2)お金と契約の整理、(3)家族での話し合いと役割分担、この順番です。これらは本人の判断力がしっかりしているうちに動くほど、選べる選択肢が多くなります。認知症は進行性の病気ですが、初期・中期・重度と段階があり、初期であれば本人の意思を確認しながら準備を進められます。逆に、進行してから慌てて動くと、契約も財産管理も本人の同意が取れず、家族が身動きできなくなるケースが少なくありません。
まずは介護保険の申請を
介護サービスを利用するには「要介護認定」が必要です。お住まいの市区町村の窓口か、地域包括支援センターで申請します。申請は無料で、原則65歳以上、または40〜64歳でも認知症など特定の病気(特定疾病)に該当すれば申請できます。申請には介護保険被保険者証やマイナンバーが必要になることが多いので、事前に窓口へ持ち物を確認しておくとスムーズです。
認定結果が出るまでは、申請から通常30日ほどかかります。要支援1〜2、要介護1〜5の7段階で区分され、区分に応じて使えるサービスの1か月あたりの上限額(支給限度額)が変わります。たとえば要介護1なら月およそ16万円台、要介護5なら月およそ36万円台が目安で、この範囲内なら自己負担は原則1〜3割で済みます。よくあるのが「まだそこまで手がかからないから」と申請を先延ばしにするケースですが、認定には時間がかかるうえ、いざ必要になったときに間に合いません。診断が出たら、早めに動いておくことをおすすめします。なお区分は状態が変われば見直し(区分変更申請)ができ、認定にも有効期間があるため、更新の時期は忘れないようにしましょう。
かかりつけ医とのつながりを作る
認定の際には「主治医意見書」が必要になります。認知症の診断をした医師や、日頃の体調を診てもらえるかかりつけ医との関係を整えておきましょう。物忘れ外来や認知症専門医だけでなく、内科のかかりつけ医が本人の全体像を把握してくれると、その後の生活支援がスムーズです。意見書は市区町村が医師に直接依頼する形が一般的なので、家族は「どの医師に書いてもらうか」を窓口に伝えられるよう考えておくと安心です。かかりつけ医がいない場合は、地域包括支援センターに相談すれば近隣の医療機関を紹介してもらえます。
本人の意思を確認しておく
初期のうちだからこそできる大切なことが、本人の希望を聞いておくことです。どこで暮らしたいか、延命や介護についてどう考えているか、お金の管理を誰に任せたいか。ケースによりますが、判断力がはっきりしている段階で話しておくと、後々ご家族が難しい決断を迫られたときの支えになります。改まって切り出すと本人が身構えることもあるので、日常会話の中で少しずつ、責めるような口調を避けて聞いていくのが現場でうまくいくコツです。
お金・契約・施設をどう整理するか
生活の仕組みと並行して考えたいのが、お金や契約、そして将来の住まいです。ここは専門的な話も絡むので、迷いながらでも早めに手をつけておくと安心です。
お金と財産の管理を考える
認知症が進むと、本人名義の預金の引き出しや不動産の売却、各種契約が難しくなります。判断力が低下すると、金融機関が口座を凍結してしまうこともあり、家族でも自由に動かせなくなるのが実情です。とくに医療費や施設費をその口座から払う予定だった場合、支払いが滞って家族が立て替えに追われる、という失敗が起こりがちです。
対策としては「成年後見制度」や「家族信託」があります。成年後見は家庭裁判所が関わる公的な制度で、専門職が後見人になると月2万〜6万円程度の報酬が発生することもあります。いったん始めると原則として本人が亡くなるまで続く点は理解しておきましょう。家族信託は元気なうちに家族へ財産管理を託す仕組みで、契約書作成などで数十万円程度の初期費用はかかりますが、柔軟性が高いのが特長です。また、日常のお金の出し入れ程度なら、社会福祉協議会の日常生活自立支援事業といった軽めの支援もあります。どれが向くかはご家庭の資産状況や関係性次第なので、司法書士など専門家に相談して選ぶのが安心です。
施設は「今すぐ」でなくても情報収集を
診断直後に入居を急ぐ必要はありません。ただ、いざというときのために種類と費用相場だけは知っておきましょう。
在宅を続けるならデイサービスやショートステイ、訪問介護から。施設ならグループホーム(認知症対応・月15万〜20万円前後)、特別養護老人ホーム(比較的安価だが待機が長い)、介護付き有料老人ホーム(月20万〜30万円以上と幅広い)などがあります。グループホームは原則としてその地域に住む人が対象になるなど条件があるため、早めに要件を確認しておくと安心です。特養は原則要介護3以上が対象で、費用を抑えられる反面、地域によっては数か月〜年単位の待機が出ることもあります。早めに候補を知り、見学だけでもしておくと、必要になったとき慌てずに済みます。パンフレットの費用表示には家賃や食費、日常生活費が含まれていないこともあるので、見学時に「毎月の総額でいくらか」を確認するのが失敗しないコツです。
家族だけで抱え込まない
よくある失敗が、主に介護する一人にすべての負担が集中し、その人が先に倒れてしまうことです。誰が金銭管理を、誰が通院の付き添いを、誰が施設との連絡を担うのか。役割を分けて、遠方の家族もできる範囲で関わる形を作りましょう。遠方でも、費用の一部を負担する、月に一度電話で様子を確認する、書類手続きを引き受けるなど、できることは意外とあります。介護は数年〜十数年続くこともあります。ケアマネジャーや同じ立場の家族が集まる「家族会」なども頼りながら、無理のない体制づくりをすることが、結局は本人のためにもなります。
よくある質問(FAQ)
Q1. 認知症の診断が出たら、すぐ仕事を辞めて介護に専念すべき?
A1. いいえ、まず介護保険サービスの利用を検討してください。介護離職は収入が絶たれるリスクが大きく、デイサービスや訪問介護を組み合わせれば仕事と両立できるケースも多いです。介護休業や介護休暇といった制度も勤務先で使えないか確認してみましょう。
Q2. 要介護認定はどれくらいで結果が出ますか?
A2. 申請から通常30日ほどが目安です。訪問調査と主治医意見書をもとに判定されます。結果を待つ間も、地域包括支援センターに相談すれば使えるサービスの案内を受けられます。急ぐ場合は暫定的にサービスを利用できることもあるので、窓口に相談してみてください。
Q3. 本人が受診や介護を拒否します。どうすれば?
A3. 正面から説得するより、かかりつけ医や地域包括支援センターなど第三者に間に入ってもらうのが有効です。「健康診断」など本人が受け入れやすい形で受診につなげる工夫も現場ではよく使われます。プライドを傷つけない言葉選びを心がけると、拒否が和らぐこともあります。
Q4. 費用は月にどれくらいかかりますか?
A4. 在宅なら数万円程度から、施設入居なら月15万〜30万円以上と幅があります。介護保険で自己負担は原則1〜3割に抑えられます。所得や資産に応じた軽減制度(高額介護サービス費や特養などの負担限度額認定)もあるため、自治体窓口で確認してください。
Q5. 財産管理は成年後見と家族信託、どちらがいい?
A5. ケースによります。すでに判断力が低下しているなら成年後見、まだ元気で柔軟に備えたいなら家族信託が候補です。費用や手続き、途中でやめられるかどうかが異なるので、司法書士など専門家への相談をおすすめします。
Q6. まず誰に相談すればいいのか分かりません。
A6. 最初の窓口は、お住まいの地域包括支援センターが基本です。介護・医療・お金の相談を無料で受けられます。担当エリアは住所で決まっているので、市区町村のホームページや役所で確認できます。何から聞けばいいか分からない段階でも大丈夫なので、まず一度連絡してみてください。
Q7. 一人暮らしの親が診断されました。同居すべき?
A7. 必ずしも同居が正解とは限りません。見守りサービスや配食、訪問介護、施設という選択肢もあります。同居で環境が急に変わると、かえって症状が不安定になることもあります。本人の希望と家族の生活を両立できる形を、専門家を交えて探すのが現実的です。
まとめ
認知症と診断されたら、まずこの順で動きましょう。
- 介護保険の要介護認定を早めに申請する(結果まで約30日)
- かかりつけ医とのつながりを作り、主治医意見書に備える
- 本人の判断力があるうちに、お金の管理(成年後見・家族信託)や希望を整理する
- 施設は急がず、種類と費用相場(月15万〜30万円が一つの目安)を知って情報収集しておく
- 介護する家族に負担が集中しないよう、役割分担の体制を作る
診断直後は不安でいっぱいになりますが、初期にできる準備を一つずつ進めれば、その後の数年はずっと落ち着いて乗り越えられます。制度や費用は自治体や専門家によって扱いが変わることもあるので、迷ったら必ず確認を。そして、誰に・どこに相談すればいいか分からないときは、介護・施設・お金・制度のすべてを一つの窓口で受け止める「福祉のまどぐち」に、まず一度ご相談ください。最初の一歩を、一緒に整理するところから始めましょう。

